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原子間力顕微鏡(AFM)とは?

原子間力顕微鏡 (AFM) とは?

原子間力顕微鏡(AFM)は、走査型プローブ顕微鏡の高分解能タイプであり、鋭利な探針を使用してラスタースキャンを行うことで、物質を原子スケールやナノスケールで測定・可視化することができます。この概要は、原子間力顕微鏡についての解説・入門編となります。

顕微鏡は、肉眼では見えないものを見るための道具であり、古代ギリシャ語の「mikrós(小さい)」と「skopeîn(見る)」に由来しています。AFMは、「測定モード」というさまざまな手法を用いて、ナノメートル未満(<1 nm)(0.5 nmは原子の平均な大きさ)から、1マイクロメートル(ミクロンとも呼ばれる)までのスケールのサンプルを分析します。ナノや原子のスケールがどのくらい小さいか、感覚をつかむために、こちらの映像をご覧ください。地球にとってのテニスボールが、テニスボールにとっての原子のような感じです。

How big is an atom? How big are quarks? Atomic scale, represented in a GIF.

AFMは、表面を指で触るのと同じように、「感じる」ことで情報を収集しますが、そのスケールは、はるかに小さな領域となります。AFMは、先端が非常に鋭い微小なプローブを使用して、わずかな力の変化を検出します。このシンプルですが巧みなアイデアは、1980年代初頭に発明され、その後まもなく1986年にノーベル賞を受賞しました。

原子間力顕微鏡の用途

AFM scanning is like dragging your finger over a surface but at a much smaller scale

AFMは、微細な「構造」の可視化に使用されることがもっとも多いですが、電気的、機械的、およびその他の材料特性を局所的に測定するためにも役立ちます。さらに、導電性・絶縁性、透明・不透明、柔らかいもの・硬いものなど、さまざまな材料に対応しています。

その結果、AFMは、分子・細胞生物学、ボトムアップアセンブリ、2次元材料などの基礎研究から、マイクロエレクトロニクス、プラスチック・ゴム、エネルギー貯蔵・発電デバイスなどの産業分野にいたるまで、研究開発のあらゆる分野で利用される「頼れる」ツールとなっています。以下のアプリケーション分野は、AFMのパワーと汎用性を示しています(詳細は下記のAFM画像をクリックしてください)。

ポリマー(高分子)

半導体・
マイクロエレクトロニクス

薄膜・コーティング

AFM Application: Polymers
AFM Application: Semiconductors
AFM Application: Thin Films

生体分子・生体膜

グラフェン・2次元材料

ウイルス学研究

AFM Application: Biomolecules & Membranes
AFM Application: 2D Materials, Graphene
AFM Application: Virus Research, Virology

これらのリソースは、特定のアプリケーションごとに、AFMの使用例を解説しています:

高分子科学&エンジニアリングにおけるAFMアプリケーション ホワイトペーパー

AFMによる2次元材料の特性評価 ホワイトペーパー

食品科学におけるAFM ホワイトペーパー

高分解能AFMイメージングによるウイルス学研究のご提案 ホワイトペーパー

AFMによる次世代太陽光発電材料の特性評価 ウェビナー

薄膜解析のためのAFMツール ウェビナー

原子間力顕微鏡のしくみ

AFMの測定は、原子間力顕微鏡(atomic force microscope, AFM)と呼ばれる装置で行われます。AFMは3つのサブシステムから成り、それぞれが個別に機能します。

1) センシング, 2) 検出 3) ポジショニング

-- さらに、これらの機能を調整するコントローラ電子機器があります。

how-atomic-force-microscopy-afm-works

AFMのセンサーはカンチレバーと呼ばれ、自由端の近くに鋭利で微小な探針が付いています。探針は、サンプルに十分に近づくと、サンプル表面の力の影響を受けます。その結果、探針が動き、カンチレバー全体が曲がります。カンチレバーの曲がり(たわみ,反り,しなり)は、レーザーと光検出器(光を電気信号に変換するデバイス)を用いて光学的に検出されます。ピエゾアクチュエータと呼ばれる位置決め用のハードウェアを使用して、カンチレバーとサンプル間の相対位置を3軸方向に変えます。

トポグラフィ(形状)イメージング

最も一般的なタイプのAFM測定は、信号の空間的変化、つまりトポグラフィ(高さ,ハイト)のイメージを作成することです。イメージの取得は、ポジショナーを使用して探針でサンプル上をスキャンし、データポイントの2Dマップを検出して行います。

topography imaging AFM interface between computer and controller

トポグラフィ(形状)像により、RNAやヘミミセル、ナノ粒子、トランジスタなど、多くの天然・合成の微細構造が可視化できます。また、自己組織化単分子膜や低次元材料から、フィルムやバルクサンプルにいたるまで、表面の特性評価にも非常に役立ちます。ここでは、粗さや欠陥、アモルファス・結晶相、薄膜の核生成・成長に関する情報が得られます。

3Dイメージを提供するだけでなく、トポグラフィ(形状)測定の定量的データをすばやく分析して、プロセス制御やその他の比較のための性能指数(例えば、平均粗さSaなど)を取得できます。さらに、以下の例に示すように、さまざまな環境条件やスキャン速度でイメージングを行うことも可能です。走査型電子顕微鏡(SEM)やプロフィロメトリーなど、他のツールもこれらのタイプの測定によく使用されますが、AFMほど詳細な測定を提供するものではありません。表面粗さ測定のツールの違いについてはこちらをご覧ください。

トポグラフィ像の先へ

AFMの「力を検出する」というコンセプトは、電気的、機械的、機能的、およびトライボロジー的な性質など、局所的な物理特性の測定を可能にします。これらの測定は、トポグラフィ(形状)像だけでは得られない貴重な情報を提供することがよくあります。

ナノエレクトリカル特性評価(微小領域の電気特性を知る)

たとえば、電気特性や電気機械特性といった機能特性は、太陽電池から不揮発性メモリやデータストレージにいたるまで、さまざまなアプリケーションに影響を与えます。また、デバイスの微細化にともない、これらの特性をより微小な長さスケールで評価する必要性が生じています。AFMのなかには、探針とサンプル間の静電的、磁気的、およびその他の相互作用を検出することで、ナノスケールでの機能的な挙動を調べるためのモードがいくつか開発されています。これらのモードが提供する情報は、均一性の評価や欠陥の特定など、品質の保証に役立ちます。さらに、このモードにより、デバイス全体をテストするプローブステーションからのデータを補完・強化させることも可能です。

ナノメカニカル特性評価(微小領域の力学物性を知る)

その他のアプリケーションでは、機械特性(力学物性)やトライボロジー特性が、性能や信頼性に影響することから最重要となります。AFMは微小な力を検出できる感度を備えているため、他の方法に比べて、垂直・水平方向の分解能がはるかに高い機械的測定が可能です。

フォースカーブは、定量的なナノメカニカル測定を行うための典型的な方法です。軟らかい生体材料や高分子材料に最適であり、単一分子における結合の切断強度を測定することも可能です。フォースカーブは、特定の位置で探針をサンプルに接触させて引き離すという動作を行うことで得られます。フォースカーブを2次元に配列したものは、フォースマップまたはフォースボリュームと呼ばれ、異なる特性(弾性率、接着力など)のイメージが複数が得られます。

しかし、グラフェンやダイヤモンドにいたる、より硬い材料の機械特性を評価することは、多くの先端技術にとって重要です。このようなニーズに応えるために、AFMのナノメカニカルモードがいくつか開発されました。これらのモードでは、さまざまな操作方法を採用しており、より高速なスキャンや粘弾性応答の測定など、フォースカーブの手法に勝る利点を提供できます。

関連するリソース:

知っておきたいAFMの基本技術 ウェビナー

ナノスケールの電気特性評価のためのAFMツール ホワイトペーパー

圧電応答顕微鏡 (PFM):入門編 ウェビナー

走査型静電容量顕微鏡 ホワイトペーパー

AFMによるナノトライボロジー ホワイトペーパー

まとめ

わずか数十年のうちに、AFMはノーベル賞を受賞した発明から表面分析に不可欠なツールへと成長を遂げました。AFMは、ナノスケールの構造をイメージングすることでよく知られていますが、多くの物理特性を微小なスケールで評価することも可能です。最近では、より高い空間分解能、より高速なイメージング速度、さらに充実した環境オプションなど、装置の進化によってAFMの価値はこれまで以上に高まっています。これらの機能は将来的にもさらに向上するべく改良が重ねられ、AFMは科学技術の発展に貢献し続けていくことでしょう。

原子間力顕微鏡(AFM)のテクノロジーリーダー

オックスフォード・インストゥルメンツ社 アサイラム・リサーチは、材料およびバイオサイエンス研究用の原子間力顕微鏡におけるテクノロジーリーダーです。アサイラム・リサーチのAFMは、学術および産業の両分野の研究者により、材料科学、高分子、薄膜、エネルギー研究、生物物理学など多様な分野における試料の特性評価に広く使用されています。

分野や用途に応じて、3シリーズの原子間力顕微鏡(AFM)をラインナップしています。

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