オックスフォード・インストゥルメンツー事業部ページ
拡張

多様なナノマテリアル分析において最も重要となるのは
フレキシビリティ

研究テーマ

ナノマテリアルの研究では、原子スケールで構造と機能の相関を分析することが必要となります。試料表面を探針でスキャンするAFM(原子間力顕微鏡)は、そのようなデータを得るためのユニークな機能を備えています。ここで、一例をご紹介します。トロント大学のTobin Filleter教授の研究室で博士課程に在籍するPeter Serles氏は、 Cypher SMFP‑3D Originの両方のAFMを用いて、固体潤滑剤として広く使われているMoS2コーティングの摩擦特性を分析しています。さらに、非ファンデルワールス2次元材料として知られているマグネテンの摩擦特性に関する研究を世界に先駆けて実施しました。この材料は、高度な潤滑剤の開発において大きなポテンシャルを秘めています。

アサイラム リサーチ社のCypher S AFMに試料をセットする科学者。

「CypherとMFP-3D、両方のAFMを使うことにより、ルーチンワークと高度な特性評価の両立が可能になりました。
測定モードの切り替えは簡単で、スピード、解像度、感度のそれぞれに妥協というものを見出せません。」


— Peter Serles氏。Tobin Filleter教授(トロント大学)の研究室において博士課程に在籍。

研究手法

ここでのマグネテンに関する研究では、Cypher および MFP-3D のLFM(水平力顕微鏡)モードを用いて、カンチレバーのねじれ方向バネ定数のキャリブレーションを行い、摩擦の定量的測定を行っています[i]。また別の研究では、TSM(横方向せん断顕微鏡)モードと呼ばれる最近開発された新しい測定技術を使用して、ポリエチレン単結晶内のポリマー配列のセクター化がマッピングされています。ここでは、カンチレバーの長軸に沿って探針や試料のスキャンが行われました[ii]。

同グループはMoS2コーティングの強度と機械的破壊特性を定量化するために、まず、この材料を用いて微小なマイクロカンチレバーを作製しました。そして、MFP-3Dを用い、そのMoS2カンチレバー上でAFM探針を接触させ荷重をかけるフォースカーブ測定を行い、剛性と強度を定量化しました[iii]。

さらに別の研究では,hBN(六方晶窒化ホウ素)をフッ素化することで,バンドギャップと摩擦の両方が関連性を持って減少することを明らかにしました。摩擦はLFM(水平力顕微鏡)を用いて測定し、バンドギャップはORCAモードのcAFM(導電性AFM)測定によって測定しました[iv]。

ユーザーの声

Peter氏は次のように感想を述べています。「ナノマテリアル研究では、一般的に、電気的・磁気的特性から摩擦や強度・応力パラメータ(ヤング率など)のような物理的特性まで、形態と幅広い材料特性の両方を調べることになります。ですから、多くの種類の測定モードを簡単に実行できる柔軟性を持ったAFMが必要なのです。」

さらに、「CypherとMFP-3D、両方のAFMを使いことにより、ルーチンワークと高度な特性評価の両立が可能になりました。測定モードの切り替えは簡単で、スピード、解像度、感度のそれぞれに妥協というものを見出せません。また、非常にチャレンジングな実験では、アサイラム・リサーチのAFMのオープンソースソフトウェアに大いに助けられました。」と付け加えています。

Collage of 4 different AFM images. Labelled, in order,: (a) - height, (b) amplitude, (c) - LFM, and (d) - TSM.

ポリエチレンの単結晶をマッピング。新しいTSMモードのみ、セクタリングを画像化できている。


参考文献

[i] P. Serles et al., Friction of magnetene, a non–van der Waals 2D material, Science Advances, 2021, 7 (47). https://doi.org/10.1126/sciadv.abk2041

[ii] M. Hamidinejad et al., Sectorization of Macromolecular Single Crystals Unveiled by Probing Shear Anisotropy, ACS Macro Letters, 2022, 11, 1, 53-59. https://doi.org/10.1021/acsmac...

[iii] G. Colas et al., Strength measurement and rupture mechanisms of a micron thick nanocrystalline MoS2 coating using AFM based micro-bending tests, Journal of the Mechanics and Physics of Solids, 2019, 128, 151-161, https://doi.org/10.1016/j.jmps.2019.04.007

[iv] A. Meiyazhagan et al., Gas-Phase Fluorination of Hexagonal Boron Nitride, Advanced Materials, 33 (52), 2106084. https://doi.org/10.1002/adma.2...

お問い合わせ

関連製品